contuct us: info@meizen.fku.ed.jp
phone: 0942-32-5241

Academic Overview

 定時制80周年記念行事 80th Anniversary


■80周年記念 式辞


清涼の気に満ち、薫る菊花に穏やかな秋を感じる今日の佳き日に、福岡県教育委員会委員 久保田 誠二 様を始め、多数の御来賓並びに関係各位の御臨席を仰ぎ、ここに福岡県立明善高等学校定時制課程創立80周年の栄えある式典を挙行できますことは、90名の本校生徒、教職員にとって誠に大きな喜びであります。まずもって皆様の「明善定時」にお寄せいただく御厚情に対し、心からお礼を申し上げます。

本日の創立80周年記念式典は、生徒と教職員が80年の歴史と伝統に感謝し、自らの成長に向け尽力するとともに、「明善定時」を一層充実した学び舎として次の世代にバトンを渡す、そのような決意を新たにする大きな節目であります。

「克己、盡力、樂天」のわが学び舎、愛称“Night School"の本校定時制課程は、戦後の定時制通信制教育に先駆けること10年、時は満州事変から日中戦争へと向かう中、昭和12年(1937年)に福岡県久留米夜間中学校として設立されたことをもって出発点としています。昭和44年(1969年)の明善高校創立90周年を記念して編まれた「明善校90年史」を紐解きますと、「商工業都市として繁昌してはいた久留米市にも勤労青少年に対する公的な学校や施設は全くなかった。‥‥彼等にとって、わずかな希望は、その仕事を身につけて他日独立の事業を経営することであったが、その希望の実現は極めて困難なことで、大部分の者にとっては夢も希望もない労働の連続の日々が続いていた。‥‥次代の商工業の担い手である勤労青少年に学問と希望を与えることは極めて重要なことであった。」と記されており、地元久留米市の人々の、地域及び若者に対する大きな期待の中で設立を見たのであります。

故に、開設されますと、続けて「明善校90年史」からの引用でありますが、「弟の語る夜中(やちゅう)の学風を慕って、その兄が弟の下学年に入学した事もある。又店員の話す夜中(やちゅう)の生活に感激した薬店主が店員の次の学年に入学したこともあった。かくて我々は日本一の夜間中学此処にあり」と書かれており、このような大きな自負と情熱のもとに、教育が進められたのでありました。

その後、昭和16年(1941年)には福岡県立久留米中学校と改称し、戦後の学制改革の変遷を経て、昭和26年(1951年)に福岡県立明善高等学校定時制となり、今日に至っております。

この間、「明善定時」は久留米市を中心とした筑後地区の勤労青少年の学び舎として、多くの優れた人財を社会に送り出して参りました。6,000名を超える同窓の皆様は、地元はもとより、国の内外を問わず各界・各分野で活躍されており、在校生にとっても心強い道しるべとなっております。

「まごころの道明善に力を盡くす二千人」と歌う新制校歌が制定されましたのが昭和31年(1956年)であり、その翌年が夜間中学創立20周年、定時制設置10周年に当たっており、その記念事業の一つとして設けられたのが、今もって生徒の学業を支えていただいております、地元各社による「定時制奨学会」であり、「明善定時一千の勤労学徒の誇り」と歌う「明善定時逍遙歌」の制定であります。全日制に1,000人、定時制に1,000人、合わせて2,000人の若者がここ明善に集ったということでありますが、定時制に1,000人の生徒、これは誇張ではなく、“Japan As No.1"という言葉に象徴される昭和の高度経済成長の時期を思い、明善を取り巻く商工業の状況を振り返りますと、その現実と活況が容易に想像できるのであります。

ここに80年の時が移り、定時制高校の役割も大きく変わって参りました。従来の勤労青少年に対する学習機会の保障だけではなく、学び直しを始め多様な状況にある生徒の学び舎として、また、安心、信頼できる居場所として、その役割を大きく変えて参りました。経済的、社会的な、大きく急速な変化に伴い、生徒を取り巻く環境も大きく変化しています。

その中にあって、定時制で学ぶ者に何より必要なことは、これまでと変わらず、学ぼうとする意欲であり、働きながら学んでいることへの誇りであり、苦労しながら学ぶ者同士のかけがえのない友情であります。様々な事情を抱え、様々な思いや願いを抱きながら、昼間働いた後、疲れた体であっても学校に向かい、夜間眠い目を擦りながら、互いに支え合い励まし合いながら学ぶ若者の姿にこそ、定時制高校で学ぶことの原点があり、「勤労学徒の誇り」があることを、生徒の皆さんには再認識していただきたいと思うのです。わかった喜び、できた喜びを積み重ねていくことこそが、自己実現(for me)と社会貢献(for you)を同時に叶えることに繋がるのです。

私は生徒の皆さんの「生活体験発表」が大好きです。自分の抱える事情を文字にして人前で発表する。これは、向かおうとする先に夢や目標を持つことができたからこそ発表できるのであり、自分を客観視して「私には夢があります。」と人に伝え、大きく一歩踏み出そうとする生徒の皆さんの姿、明るさが大好きです。

歌手の絢香(あやか)さんに「にじいろ」という歌があります。これは、次の四つ角を曲がった先には、見えないけれども、また良いことがあるに違いない。だから一歩踏み出そう、前に歩いて行こうという気持ちを表した曲だと聞いたことがあります。歌詞にこのようにあります。

  これからはじまるあなたの物語
  ずっと長く道は続くよ
  ・・・・・・
  なくしたものを数えて瞳閉ざすよりも
  あるものを数えた方が瞳輝きだす
  あなたが笑えば誰かも笑うこと
  乗り越えれば強くなること
  ひとつひとつがあなたになる
  道は続くよ

このようにあります。まさに皆さんのそれぞれの物語は、これから始まるのです。ここから始まるのです。

さて、本日の創立80周年の節目に当たり、創立当時を振り返り、戦中戦後の幾多の苦難に耐え、弛まぬ努力をもって学び続け、人生を切り開いていかれた卒業生の方々へ思いを馳せますとともに、「中学校を卒業したら働きたい。でも高校は卒業しておきたい。」という思いと同時に、学校に対する不安感や不信感を持って入学する生徒も、4年後の卒業時には学校を「安心できる大切な居場所」と感じてくれるようになる、この愛すべき生徒とともに、「明善定時」の一層の充実、発展に尽力して参りたいと意を新たにしております。

終わりになりましたが、本日御臨席の皆様始め、この80年間にお寄せいただきました多方面からの御支援に対し、深く感謝申し上げますとともに、「明善定時」のさらなる発展のため、今後ともなお一層の御指導、御支援を賜りますようお願い申し上げ、式辞といたします。



平成29年10月25日

学校長  長 俊一 (ちょう しゅんいち)